【虫歯菌の正体】
 虫歯菌の正体は,ストレプトコッカスミュータンス(ミュータンス菌)です.口の中にいるいわゆる常在菌(ごくごく一般的な菌)です.お砂糖(ショ糖)を栄養源として酸を産生します.その酸が歯を溶かすことになります.生まれたばかりの赤ちゃんの口の中には存在しません.つまり,主に母親の口から,スプーンやキスなどで移ってしまうといわれています.
 このように,虫歯は感染性の疾患とも言えます・

【砂糖の歴史】
 砂糖そのものが高価で,貴重な時代の11世紀の偉大な医学者アヴィセンナが「砂糖菓子こそは,万能薬である」と断言していましたが,この人物が著した医学書は少なくとも17世紀までは,ヨーロッパの薬学の世界でも最高の権威とされたものでした.また,16世紀ヨーロッパのある医学書では,砂糖が虫歯をつくりやすいことだけは認めているものの,胸,肺,のどの病気には効果があり,「粉状にすると眼にも効くし,気化させれば風邪一般に効く. ・・・老人の強壮剤にもなる.」として,砂糖には万能薬の地位を与えています.
 18世紀には砂糖の功罪について大論争が起こり,糖尿病や壊血病の指摘もされましたが,一般の民衆は栄養の不足に悩まされているのがふつうでしたから,薬品としては疑問をいだく人がふえても,「食品」としての砂糖はどんどん普及していきました.
 (「砂糖の世界史」川北稔著 岩波ジュニア新書276)

【砂糖と虫歯】
 砂糖が虫歯の原因であるということは,よく知られた事実です.口の中に存在するストレプトコッカスミュータンス(ミュータンス菌)が砂糖(ショ糖)を栄養源として,代謝し,産生した酸によって,歯が溶けて(脱灰)虫歯になる.
 この簡単なことが,人間にとって大事な歯にダメージを受けることになるわけです.
 砂糖が高価で,なかなか手に入らなかった時代は,消費量そのものが少なかったので,人間の虫歯そのものが少なかったと考えられますが,調味料としていろいろな食品に添加され,知らないうちに砂糖を摂取している現代では,そのコントロールが難しいと言えるでしょう.

【虫歯菌と砂糖がなかったら?】
 虫歯菌がいなかったら,虫歯はありません.
 砂糖がなかったら,虫歯はありません.
 そして,歯がなかったら,虫歯はありません.
 なんか変なことを言っている.とお思いでしょうが,歯が存在して,虫歯菌が存在して,砂糖が存在することによって,はじめて虫歯ができるのです.
 歯,虫歯菌,砂糖のどれか一つがなくなれば,虫歯はなくなるとも言えます.